パワハラ防止法に罰則規定はあるの?2020年6月の法施行に向けて悪質なパワハラな場合の国家公務員の懲戒指針が改正

パワハラ防止を初めて企業に義務付ける法律が2020年6月に施行されます(対象は大企業、中小企業は後)。法律では、企業に対する「禁止規定」ではなく、防止策を求める「措置義務」で罰則もありません。措置義務については、厚生労働省は指針を示しています。罰則規定がない中での実効性も疑問視される中、人事院は、国家公務員の悪質なパワハラについては、免職を含む厳しい処分とする方針を固めたようです。

パワハラ防止法

制定の背景

正式名称は「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」という長い名前の法律で、略して「労働施策総合推進法」です。元は「雇用対策法」(1968年制定)というシンプルな名前の法律でしたが、働き方改革推進法によって名称が変わり、2018年(平成30年)7月に現在の法律名となりました。この「労働施策総合推進法」その一部分の第30条の2から第30条の7などにパワハラ防止対策に関係する規定があり、第33条第2項に公表、第36条第1項に報告の請求、第41条に報告をしない場合などの過料(罰則ではない)の規定があり、そこの部分を通称「パワハラ防止法」といいます。

パワハラの定義

「職場において行われる」

「優越的な関係を背景とした言動」

「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」

事業主に対する義務づけ

以下を措置義務として義務づけをしています。

(1)当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

(2)その他の雇用管理上必要な措置

職場のパワハラの6類型(パワハラの種類)

職場のパワハラの6類型は、次の通りです。「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年1月15日厚生労働省告示)に示されたものです。裁判例や個別労働関係紛争処理事案に基づいて考案されて、パワハラの代表例だと言えます。

(1)身体的な攻撃
(2)精神的な攻撃
(3)人間関係からの切り離し
(4)過大な要求
(5)過小な要求
(6)個の侵害

(1) 身体的な攻撃(暴行・傷害)

○ 該当すると考えられる例
① 殴打、足蹴りを行うこと。② 相手に物を投げつけること。
● 該当しないと考えられる例
① 誤ってぶつかること。

(2) 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)

○ 該当すると考えられる例
① 人格を否定するような言動を行うこと。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うことを含む。
② 業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行うこと。
③ 他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと。
④ 相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛てに送信すること。
● 該当しないと考えられる例
① 遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働
者に対して一定程度強く注意をすること。
② その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、一
定程度強く注意をすること。

(3) 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)

○ 該当すると考えられる例
① 自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりすること。
② 一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること。
● 該当しないと考えられる例
① 新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に別室で研修等の教育を実施すること。
② 懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるために、その前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせること。

(4) 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)

○ 該当すると考えられる例
① 長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずること。
② 新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責すること。
③ 労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること。
● 該当しないと考えられる例
① 労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せること。
② 業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せること。

(5) 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと

○ 該当すると考えられる例
① 管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること。
② 気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないこと。
● 該当しないと考えられる例
① 労働者の能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減すること。

(6) 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

○ 該当すると考えられる例
① 労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすること。
② 労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること。
● 該当しないと考えられる例
① 労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行うこと。
② 労働者の了解を得て、当該労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促すこと。
※プライバシー保護の観点から、機微な個人情報を暴露することのないよう、労働者に周知・啓発する等の措置を講じることが必要である。

パワハラ防止法の評価

法律に罰則規定がないことから、一部の専門家からは法律の効果について疑問視する声も出ているようです。しかし、勧告をしてもなかなか改善が見られない企業については、企業名が公表される見通しです。パワハラに対する認識は、一歩前進すると言えるでしょう。また、これまでは、何がパワハラで何がパワハラでないのかの線引きは曖昧でした。今回の法改正とその指針により、パワハラの定義が定められたため、企業内でもその指針が作りやすくなったことも評価できるようです。

パワハラ防止法の今後

民間企業

2022年以降に、パワハラ防止の義務付けが大企業だけでなく中小企業にも拡大されることでしょう。罰則規定の盛り込みは、慎重に対応されることになるかもしれません。適正な指導とパワハラの境界が曖昧であるという企業側の意見や企業が自由に社員を解雇できない日本独特の雇用環境にも配慮が必要です。しかし、改善されない企業のパワハラが公表されるのであれば、企業イメージが大切な大企業こそその対策には真摯に取り組まざるを得ないでしょう。部下に対し、プレッシャーをかける形でしか成果を上げられなかった古典的な管理職は淘汰されていくことになりそうですね。

公務員

2018年度に国家公務員が人事院に寄せたパワハラ相談は過去最多の230件で、パワハラ対策は働きやすい職場への改革の一環です。人事院の指針ではパワハラで著しい精神的・身体的苦痛を与えた場合は停職や減給、戒告に、注意を受けたのに行為を繰り返した場合は停職や減給にし、相手を強いストレスで精神疾患に追い込んだ職員は免職や停職、減給とするようです。都道府県や市町村は人事院の指針に沿って職員の懲戒処分の基準を定めているので、国の改正を受け、地方公務員のパワハラに対しても同様の処分を科す自治体が相次ぐ可能性が高いと思われます。民間企業では、パワハラ相談窓口の設置やパワハラに関する職場調査、研修などが加速されていくでしょう。

 

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