新型コロナウイルスの起源をめぐっては諸説あるところですが、今回は「セイザンコウ」と「コウモリ」2種類の野生動物を通じて密輸や違法な食用による人獣共通感染症の脅威についてまとめてみました。
新型コロナの発生はいつか
東洋経済(財新提供3月3日)によると、2019年9~12月頃に武漢の華南海鮮市場(当初、新型コロナウイルスの発生源と見られていた市場)以外の場所から感染が始まった可能性が高いそうです。
悪者にされた動物たち
当初、中国では、SARS(重症急性呼吸器症候群)と同様に、「コウモリ」が宿主であるという説がありました。しかし、コウモリの新型コロナウイルスが直接の「ヒト」の新型コロナウイルスの感染源だとは考えにくいという説が一般的になりました。次に「センザンコウ」に見られる新型コロナウイルスの型の方が「コウモリ」の新型コロナウイルスより、「ヒト」の新型コロナウイルスに近いという見解がメディアで取り上げられました。しかし、やっぱり「セイザンコウ」の新型コロナウイルスも、「ヒト」の新型コロナウイルスに直接、関係するとも考えられないようです。ただ、「センザンコウ」がウイルスの中間宿主になり、「セイザンコウ」の持つウイルスと「コウモリ」の持つウイルスが組み合わさって「ヒト」に感染する新型コロナウイルスが誕生した可能性があるという見解があるようです。
セイザンコウの密輸
取引前に見つかって良かったね。https://t.co/TjSntN0Mue #センザンコウ pic.twitter.com/zNvmpLTVxu
— 産経ニュース (@Sankei_news) June 15, 2017
世界には8種類のセイザンコウがいるそうです。アフリカ大陸(セネガルからケニア・南アフリカ共和国にかけて)やアジア(インドから中華人民共和国南部、台湾、スマトラ島、ボルネオ島にかけて)の森林やサバンナなどに生息していて夜行性の種類が多いようです。
オオセンザンコウは、体長75 – 85センチメートル、尾長65 – 80センチメートル、体重25 – 33キログラム。オナガセンザンコウは、体長30 – 35センチメートル、尾長55 – 65センチメートル、体重12 – 20キログラム。セイザンコウの全身は、お腹と手足の内側を除いて、角質の鱗(ウロコ)で覆われていますが、とても愛らしい顔をしています。かつては、鱗は漢方薬、媚薬の材料として珍重されていましたが、2017年に全種の国際取引が禁止されています。実際には、センザンコウの鱗は、人間の毛や爪と同じケラチン質が主成分であり、古来より語られているような薬効はないことが医学的に確認されています。中国やアフリカではセンザンコウの肉を食用、鱗を魔よけとして用い、インドでは鱗がリウマチに効くお守りとして、ベトナムではジャライ族が民族楽器クニーの素材として利用していました。 革も、ほとんど流通していない稀少品として高い価値をつけられることもあるようです。 今でも大量のセンザンコウがアフリカからアジアへと密輸されていて国際問題になっています。
日本では、ただ一箇所、上野動物園でセイザンコウが展示されています。
ヒトと動物との共通感染症
人と動物との共通感染症は、ヒトの感染症の60%以上を占めるそうです。人獣共通感染症では、野生生物を自然宿主にしていた病原体(ウイルス)が、家畜などの脊椎動物や昆虫などの無脊椎動物を経由し、あるいは直接にヒトへ感染して広がっていきます。過去においても、ウシから天然痘や結核、ブタやアヒルからインフルエンザ、ヒツジやヤギから炭疽症、ネズミからペスト、主にイヌ(ネコやコウモリなども)から狂犬病、そして、サル免疫不全ウイルス(SIV)が変異してヒトに感染してヒト免疫不全ウイルス(HIV-1、HIV-2)がありました。人と野生生物とは、食用や接触によって感染症が広がることが多いので注意が必要なのです。
なぜコウモリ?
もぐもぐシーン!
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自然宿主には、特に、コウモリが多いという説もあります。新型コロナウイルスと遺伝子が96%同じであるといわれる「SARSウイルス」もコウモリが自然宿主と考えられていますが、南京虫やトコジラミもコウモリからヒトに寄生先を変えた生物です。なぜコウモリが、主要な感染源になってしまうのかというと、コウモリは、哺乳類の中では進化が比較的原始的で、多くの哺乳類が持つ遺伝的特質の原型を持っているからだそうでです。そのため、変異すると他の哺乳類へ感染する能力を持ちやすいことになるのだとか…。また、コウモリは冬眠するため、ウイルスもコウモリとともに越冬し、長い期間、生きながらえることができます。その上、コウモリ自体の寿命が長く、30年以上も生きる種類もいるのだそう。また、コウモリは、湿った洞窟や木の洞などに集団で密集して生息するため、コウモリ自体がウイルス感染のパンデミックを起こしやすいのです。更に、子どもでも容易に捕まえることができるので、食用にする地域もあることが考えられるそうです。
まとめ
新型コロナウイルスについての研究は、まだ、世界中で続けられています。ウイルスがどこから来たのか?も解明されていません。
新型コロナウイルスとSARSコロナウイルスはとても近い存在であることは分っています。
しかし、新型コロナウイルスの研究が進み、原因が解明され、発生には野生動物が関係していなかったことが分ったとしても、密輸や不当な方法で野生動物を捕獲したり食べ続けていたりすると、今後も恐ろしい人獣共通感染症が染症が発生してしまうことが懸念されます。
日本で、普通の生活をしていれば全く心配はいらないことですが、食肉は正しい防疫行程を得た安全な販売ルートのものを安心して美味しくいただきたいということ、野生の動物は、むやみに捕まえたり触ったりしないことも大切ですね。
一刻も早く世界から新型コロナウイルスを封じ込みたいところです。当面、私達ができることは、政府の自粛要請に真摯に応じることが一番ですのでみんなで協力してまいりましょう。