1人10万円の「特別定額給付金」補正予算案。閣議決定されたら予算案は決定なの?今更聞けないその理由

総務省は4月20日、新型コロナウイルス感染症緊急経済対策の一つとして、国民1人あたり一律10万円を給付する特別定額給付金(仮称)の概要を発表しました。減収世帯30万円から国民1人あたり一律10万円を給付する特別定額給付金(仮称)に組み替えた令和2年度補正予算案第1号を閣議決定しましたね。閣議決定の段階で、メディアでは、まるで予算案が決定したかのよう。どうしてなのでしょう?

閣議決定された案件は、国会の多数決意見と同じになるためほぼ決定します。その仕組みを見ていきましょう。

予算編成権があるのは内閣だけ

日本の憲法では、国の予算を編成する権限を内閣に与えています。予算は、国会で審議し、議決しなければ成立しませんが、立法機関である国会も、予算を作成する権限は、持っていないのです。法律案であれば、衆議院でも参議院でも議員が法律案を作成して国会に提出することができます。しかし、予算編成だけは、内閣にしか権限がないのです。その年の当初予算案は、通常国会(1月に毎年1回、150日間。会期延長は1回だけできる。)で、必ず衆議院に先に提出されます。

なお、予算には本予算、補正予算、暫定予算があります。今回の10万円の特別定額給付金は、補正予算です。令和2年度補正予算案第1号とあるのは、令和2年度の予算の補正は初めてなので第1号なのです。

予算が気に入らない場合

もし、国会が、政府(=内閣)が提出した予算が気に入らない場合は、その予算を部分的に修正して提案することは可能です。その場合は、予算修正動議を提出し、さらに抜本的な組み替えを求める場合は予算組み替え動議を提出します。動議の提出は、委員会では1人でもできますが、本会議で行う場合は、提案者に加えて衆議院では50人以上、参議院では20人以上の賛同議員が必要で、なかなかハードルが高いのです。予算修正動議が可決されれば、予算の修正が確定します。また、予算組み替え動議が可決されれば、政府は、国会に提出している予算を撤回し、作り直した上で、あらためて国会に提出しなければなりません。

予算案は可決するのか?

予算案は衆・参で過半数があれば成立します。今の体制だと政府与党(自民党と公明党の連立)が出す予算案は、両院とも過半数がありますので、全部通る事になります。ただ政府与党は、常に、すべての法案を成立させるわけではないのです。たとえば国民投票法は長い間採決されていません。これは憲法改正に関わる法律なので少数意見を尊重して野党の意見を聞きつつ審議を進めるべきだと考えて、提案はしたものの、審議中として、敢えて採決をしていない状態です。

内閣は、総理大臣が任命する国務大臣(別名閣僚)から構成されています。国務大臣は、与党から任命されます。案件に賛成するか反対するかは、一般的には政党ごとに意思統一されます。そのため、成立を目指して、閣議で決定された意見は国会の多数決意見は同じになります。修正予算案が野党議員から動議により提案され、国会で審議対象となったとしても、可決される可能性は極めて低いです。

予算はどうやってきまるのか?

毎年夏に予算をとりまとめる財務省が各省庁と相談して大まかな枠組み・概算要求を決めます。各省庁が財務省に翌年度に必要なお金を要求することを、概算要求といいます。各省庁は 、翌年度の事業の計画を考え、財務省にその予算を求め、財務省は 「 前年の実績からこれしか出せません 」 とけずっていきます。その後、クリスマス前後に、財務大臣と各省庁のトップ同士で話し合って最後の調整をします。そして、来年1月からの通常国会に予算案を出し、3月末から4月初めにかけて国会で予算案が可決されれば、予算が決まります(令和2年度当初予算は3月末に可決した)。新年度までに本予算が成立しない場合、ある一定の期間だけ、差し当たり、予算をたてることを暫定予算といいます。当初の予算を組んで毎年4月からスタートしたあと、大災害や経済対策など当初想定しなかったことが起きることもあり、その時に、後から必要な予算を補って組むのが補正予算です。今回の新型コロナウイルス感染症緊急経済対策は、まだ、3月の時点では決め切れていなかったので、4月になって必要な予算を練り直し、補正予算として追加で組んだのです。

委員会って何?

衆議院でも参議院でも、大体同じですが、それぞれに常任委員会と特別委員会とがあります。常任委員会は、内閣、総務、法務、外交防衛、財政金融、文教科学、厚生労働、農林水産、経済産業、国土交通、環境、国家基本政策、予算、決算、行政監視、議院運営及び懲罰の17の委員会があります。議員は、少なくとも一つの常任委員になることになっています。特別委員会は、会期ごとに各議院で必要と認められたときに、その院の議決で設けられます。常任委員会及び特別委員会の委員は、各会派の所属議員数の比率に応じて各会派に割り当て、各会派から申し出た者について、議長の指名によって、選任されることになっています。委員会は、予算・条約・法律案などの議案や請願などを、本会議にかける前の予備的な審査機関として、専門的かつ詳細に審査を行います。

予算委員会って何?

常任委員会の一つで、国の歳入歳出の予算を審査する委員会です。そのほか、国民の関心事など国政全般についても広く質疑が行われます。衆議院にも参議院にもあります。予算委員会における審査は、提案理由の説明を聴取したあと、基本的質疑、一般的質疑、公聴会、分科会(参議院は委嘱審査)、締めくくり質疑などを経て、採決されます。衆議院50名・参議院45名から成り、委員会でも、最も人数が多いですね。予算委員会は、テレビを通じて見ることができる唯一の常任委員会なので各党とも質問には党の幹部・スター議員をあてています。予算委員会には、内閣総理大臣以下閣僚全員が出席し、予算案を提出した政府に対して質問がなされます。また、すべての事が予算と関係しているため、内政・外交から社会的事件など国政全般にわたってさまざまなことがとりあげられています。ちなみに、古い話ですが、ロッキード事件の証人喚問( 1976年 )、リクルート事件の証人喚問(1989年 )、最近では森友学園問題の証人喚問(2018年)が予算委員会で行われました。

予算案を否決したらどうなるの?

衆議院で内閣の重要案件である予算案が否決されたら、内閣は衆議院を解散できます。もし、衆議院と参議院が予算案について、否決か可決かで意見が分かれたときは、衆参で議決が異なる時に開く両院協議会で協議します。そこで成案が得られない場合、又は衆議院議決案の受領後30日以内に参議院が議決しない場合は、衆議院の議決が国会の議決となります(憲法第60条)。いわゆる衆議院の優越権ですが、衆議院に優越的権限が付与されている理由は、衆議院には解散があることや参議院よりも任期が短いので、衆議院は参議院より国民の意思により近いと考えられていることもあるようです。

新型コロナウイルス感染症緊急経済対策の成案

新型コロナウイルス感染症緊急経済対策の令和2年度補正予算第1号は、4月27日(月)に国会に提出される見込みで準備しているようですね。その後は、衆議院予算委員会採決、衆議院本会議の可決、参議院予算委員会採決、参議院本会議の可決を経て、30日には成案となりそうです。与野党とも休日返上で大急ぎで成案に向けて頑張るみたいです。それを支える省庁や国会のスタッフも連日大忙しではないでしょうか?予算の成立後は、各省庁や県や市町村などで補助事業や交付金事業を実施していくことになるでしょう。10万円の特別定額給付金だけでなく、どの事業も、企業や国民がスピードを求めているものばかり。早く事務が進むとよいですね。

こちらもどうぞ ↓

今更聞けない「閣議決定」って何?

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です