新型コロナウイルス(COVID-19)対策のための休業の「協力要請」と「休業の要請」の違いは?店名の公表は損害賠償を訴えられないのか?

新型コロナウイルスの緊急事態宣言に伴う休業要請に応じないパチンコ店3店舗に対して、全国で初めて、5月1日、兵庫県が休業の指示を出したと報道がありました。同県は、休業の指示以前に、4月27日から28日にかけて、改正新型インフルエンザ対策特別措置法45条に基づく休業要請をなかなか聞き入れてくれなかった7店舗の店名と所在地を公表しています。休業の要請、休業の指示や店名公表とは、どういうことなのか分りにくかったのでまとめてみました。

店舗の公表に対する動府県の動向について

特措法による店舗の公表は、大阪府が全国で初めて24日に実施したほか、北海道、神奈川県、群馬県、茨城県、長野県、新潟県、京都府、広島県が公表しています。なお、東京都については、全店が休業に応じたため、公表を見送っており、千葉県などは、営業を続けている店舗の公表を検討しています。

知事の権限で行う「協力の要請」について

特措法第24条第9項には、都道府県の権限として「(新型コロナウイルスの)対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、公私の団体又は個人に対し、その区域に係る新型インフルエンザ等対策の実施に関し必要な協力の要請をすることができる」と定められています。いの一番に東京都が独自に行った「協力の要請」は、これにあたり、緊急事態宣言が出されていなくても、知事の権限で行うことができたのです。

緊急事態宣言に伴う「要請」について

「要請」の法的根拠

特措法第45条では緊急事態宣言に伴う「要請」が定められています。緊急事態宣言が出された区域では、外出の自粛、施設の使用制限やイベントの開催の停止などを「要請することができる」とされており、今回の各都道府県知事が行った要請は、特措法第45条の要請に当たります。要請は施設の管理者を特定して行うとされています。

特措法第45条の要請も第24条の要請も協力を求めるという点では同じですが、第45条の要請は、施設の管理者などが応じない場合には、より強い措置である「指示」ができると同条第3項に規定されています。第45条の要請又は指示を行った場合は、行ったことを公表しなければならないとあります。

「店名の公表」の法的根拠

事業者名公表する根拠は、国が4月23日に都道府県向けに通知した、ガイドライン(指針)によるものです。

「指示」の法的根拠

特措法第45条の第3項に、施設の管理者などが同条の要請に応じない場合に、「指示」ができると規定されています。兵庫県が行ったのは、休業要請に応じないパチンコ店3店に、全国で初めて第3項に基づく休業指示を出したということです。しかし、指示に従わなかった場合も、店舗名と所在地が公表できるのみで罰則はありません。

「公表」された店舗に対する損害賠償

行政側の指導等に従わない場合、その名前を公表するという仕組みは、日本の法律として珍しいものではありません。こうした公表は、罰則の代わりに、市民への情報提供や行政指導などの実効性を確保する機能を果たすほか、従わない者への制裁として機能させることがよくあります。店名の公表については、休業要請をした店名を広く市民に伝え、それらの店に入店しないよう呼び掛けるという情報提供の側面と、公表された店は、社会から非難されるという側面を持ち、事実上、制裁としても機能しているように思います。

各府県の公表の手順としては、ガイドラインに示されている通り、実地調査をして、対象施設への事前通知を行い、再三協力を求めたにもかかわらず、従わなかったために、公表を行っています。また、国も強く助言しているのは、専門家の意見も踏まえた上で特措法45条の要請に踏み切り、公表のための手順を経ることです。休業が必要であることが専門家も指摘しているところであるため、公表する必要性、緊急性、合理性が認められ、方法として適当であると考えられるとされています。これらの点を踏まえると、店側に一定の損害が生じたとしても、違法性が認められる可能性は低いと考えられます。

新型インフルエンザ等対策特別措置法 (平成二十四年法律第三十一号)
施行日:令和二年三月十四日 最終更新:令和二年三月十三日公布(令和二年法律第四号)改正(感染を防止するための協力要請等)
第四十五条 特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるときは、当該特定都道府県の住民に対し、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間並びに発生の状況を考慮して当該特定都道府県知事が定める期間及び区域において、生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の新型インフルエンザ等の感染の防止に必要な協力を要請することができる。
2 特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるときは、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間を考慮して当該特定都道府県知事が定める期間において、学校、社会福祉施設(通所又は短期間の入所により利用されるものに限る。)、興行場(興行場法(昭和二十三年法律第百三十七号)第一条第一項に規定する興行場をいう。)その他の政令で定める多数の者が利用する施設を管理する者又は当該施設を使用して催物を開催する者(次項において「施設管理者等」という。)に対し、当該施設の使用の制限若しくは停止又は催物の開催の制限若しくは停止その他政令で定める措置を講ずるよう要請することができる。
3 施設管理者等が正当な理由がないのに前項の規定による要請に応じないときは、特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限り、当該施設管理者等に対し、当該要請に係る措置を講ずべきことを指示することができる。
4 特定都道府県知事は、第二項の規定による要請又は前項の規定による指示をしたときは、遅滞なく、その旨を公表しなければならない。

「罰則」について

特措法第45条の休業の要請及び指示には罰則はありませんが、特措法自体には罰則規定があります。それは、医薬品や食品、衛生用品など政令で定める物資の所有者に対する売渡し要請・強制収用などに違反した場合で、命令に従わずに物資を隠したり、運び出したりすれば、刑罰が科されます。ただ、最高刑は懲役6ヶ月、罰金でも30万円までと比較的軽い犯罪となります。また、物資を強制収用したり、その保管を命ずる際、知事らは立入検査を行ったり、報告を求めることができて、これを拒んだり、妨害したり、虚偽の報告をした者も、30万円以下の罰金が科されます。

休業の要請及び指示に従わないからといって、その店舗に立ち入り、営業や密の実態を調査するために職権で立ち入ることは、法的に保障されていないのですね。

罰則を置かない理由

新型コロナ対策としては、外出禁止令を含め、もっと強制力を伴った強力な措置が必要であり、今のままだと規制が緩すぎると感じる人もいると思います。しかし、特措法は、敢えて、国や自治体などによる権力の濫用を防ぐため、わざわざ次のような規定を置いています。特措法の立法趣旨はあくまで、こういう考え方に則っているのですね。

「国民の自由と権利が尊重されるべきことに鑑み…対策を実施する場合において、国民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、その制限は…対策を実施するため必要最小限のものでなければならない」

条例の制定

地方自治体も国の法律とは別に定める自主法として条例があります。今回の店舗公表の手順を見ていても、各府県ともガイドラインの手順に則り、専門家の意見も尊重して、何度も予め要請に従ってもらえない場合は「店舗名等を公表する」と予告しつつ何度も要請を粘り強く行った上で公表に踏み切りました。国の対応にしびれを切らせて、やむにやまれず法的根拠があやふやなまま、緊急避難的に実施して世論が味方してくれたものの実は担当者は恐る恐るの対応だったのではないかと思います。例えば、県外から入ってくる人を高速道路のサービスエリアで発熱等健康状態を検問をしたいが、一般人からの苦情の問い合わせが多く、職員の身の安全を憂慮して挫折した、といった自治体もありました。もし、条例でこういった職務を妨害するドライバーを取り締まり罰則を科すことができたら、もう少し安心できたかもしれません。感染者数や感染症の医療提供体制が各自治体によって大分事情が違うので、法律の網を日本全国一律にかけるのは、国民の自由と権利への制限の観点から、難しい面もあるかもしれません。しかし、条例なら、各自治体の実態に合わせた住民の身を守るための措置をとることができます。医療提供体制の弱い地域に、欧米などのような厳格なロックダウンも可能でしょう。その場合に、住民の代表でもある議会に条例案を提案していただくのもよいのかもしれません。

まとめ

当初、5月6日までとされていた新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言も延長が決定しましたね。ゴールデンウィークの後半ではありますが、ほとんどの店舗は閉店しているし、公演の遊具すら立入禁止のテープが巻かれている状況で、駅も道路も空いています。早く新型コロナウイルスの勢いが下火になり、平穏な日常に戻ることを願ってやみません。店舗の休業要請と店舗の公表は、パチンコ店だけが矢面に立ってしまいました。派手にお客さんが押しかけて駐車場から溢れて店の前に長い行列ができていることから、象徴的に扱われた面もあります。5月1日、栃木県遊技業協同組合が、知事に対し、パチンコ店でクラスターが起きたことがないこともあり、パチンコ店を休業要請業種から外すよう要望などもありました。パチンコ店を休業要請から外すと言う是非はおいておいて、確かにクラスターが起きているのは、未だに営業継続の実態が掴み切れていないナイトクラブや深夜も営業する飲食店等の方かもしれません。

 

 

 

 

 

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