自衛隊中央病院、新型コロナウイルスの院内感染ゼロ。自衛隊衛生科の実力。

新型コロナウイルス感染患者を220人以上も受け入れ、院内感染を起こしていない自衛隊中央病院(東京都世田谷区)。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の集団感染時も最多となる100人超の陽性患者を受け入れたにも関わらず、未だ院内感染ゼロ。その秘訣は、特殊な対策ではなく、スタッフ個々の「防護」と「ゾーニング(区域分け)」の「基本の徹底」なのだとか。

院内にウイルスを持ち込まないための徹底

患者、付き添いの家族、出入り業者ら1日300~500人の来院者は、病院の入り口の外に設置したテントを必ず通らなければなりません。そこで、スタッフが全ての来院者の体温測定や問診を実施し、もし、37・5度以上の発熱やせきなどの症状がある人は、詳しい検査を受けなければなりません。検査室までは、パーテーションで区切られた専用通路とエレベーターを利用してスタッフが必ず誘導します。

感染症病棟でのウイルスを広げない工夫

感染症病棟の扉は、二重扉。床には「HOT」と記され、その先は、重症患者が入院するホットゾーンです。空気が外に漏れ出さないように、陰圧構造になっており、医師や看護師らは必ず防護衣を装着しなければ立ち入ることができません。防御衣は、ガウン、手袋、ゴーグル、マスク、キャップ。特に気を付けるのは、脱ぐときだそうです。いくら防護していても脱ぐ際にウイルスが衣服や顔、手に付けば感染する可能性があるからです。大半の医療機関は個人防護やゾーニングを心掛けていますが、多忙や疲労から、危機意識が低下しやすい環境で、徹底的に行うのは簡単ではありません。しかし、自衛隊中央病院のスタッフは、日頃からの訓練で、その分野の意識と練度が高いのです。それもそのはず、自衛隊中央病院は、そもそも、生物兵器テロが発生した際には最前線で対応する役割を担います。平成26年の西アフリカのエボラ出血熱の流行後から、政府の「防衛省・自衛隊における感染症対応能力の向上を図る」との方針を受け、毎年、毎年、感染症患者の受け入れ訓練や、毎週月曜の防護衣着脱訓練を続けてきたそうです。素晴らしいですね。

自衛隊中央病院ってどんな病院

東京都世田谷区の防衛省三宿地区内(池尻)にある陸・海・空の三自衛隊の共同機関として昭和30年に設置された病院です。自衛隊病院は、本院のほかに自衛隊地区病院が全国に15病院が設置されています。中央病院では、傷病者等の治療だけでなく、防衛医科大学校と連携した医師臨床研修を行っています。有事に負傷者を収容することを前提としているので、常に一定の空きベッドを確保しています。現在は一般の医療機関と同じように、誰でも受診できるようですが、紹介状がないと特定療養費が加算される仕組みとなっています。敷地には、診療放射線技師養成所と障害を負った兵士を訓練する職業能力開発センターがあります。かつては、高等看護学院もありましたが、平成28年に閉鎖され、防衛医科大学校看護学科に一本化されています。

歴代自衛隊病中央病院長は、防衛医科大学校の医師が育ってきた2012年以後は防衛医大卒ですね。医師や看護師は、医官(他国の軍医に相当)、看護官と呼ばれる自衛官です。

臨床研修の対象は自衛官(防衛医官)採用者に限定されていて、防衛医科大学(三自衛隊の共同機関ではなく防衛省が設置)と密接な関係があります。また、隣接地にある国家公務員共済組合連合会三宿病院とも連携関係にあるようで、自衛隊中央病院の医官が三宿病院で一般外来の診療にあたることも多いようです。

概要

500床(一般病床:420床、精神病床:50床、感染症病床:10床、結核病床:20床)

診療科

内科、呼吸器内科、消化器内科、循環器内科、神経内科、代謝内科、感染症内科、外科、呼吸器外科、心臓血管外科、脳神経外科、整形外科、形成外科、精神科、リウマチ科、小児科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻いんこう科、リハビリテーション科、放射線科、麻酔科、歯科

自衛隊中央病院の課題

自衛隊中央病院の指揮監督は防衛大臣が陸上幕僚長を通じて行う体制です。なお、自衛隊地区病院の15病院(陸:7院[自衛隊札幌病院 – 真駒内駐屯地、自衛隊仙台病院 – 仙台駐屯地、自衛隊富士病院 – 富士駐屯地、自衛隊阪神病院 – 川西駐屯地、自衛隊福岡病院 – 春日駐屯地、自衛隊熊本病院 – 熊本駐屯地、自衛隊別府病院「別病」 – 南別府駐屯地]、海:5院[自衛隊大湊病院 – 大湊基地、自衛隊横須賀病院 – 横須賀基地、自衛隊舞鶴病院 – 舞鶴基地、自衛隊呉病院 – 呉基地、自衛隊佐世保病院 – 佐世保基地]、空:3院[自衛隊三沢病院 – 三沢基地、自衛隊岐阜病院 – 岐阜基地、自衛隊那覇病院 – 那覇基地(沖縄県那覇市)]+2021年開院予定1院[自衛隊入間病院(仮称)-入間基地])はそれぞれの幕僚長が指揮監督をします。

財務体質

公立病院の運命ではありますが、特に一定の空床をもうけなればならない自衛隊病院の財務体質があまりよくありません。財務省からは、現在16(15+予定1)ある病院を10に集約した上で、現在は一部に限定している自衛隊関係者以外の一般国民の利用をすべての病院で認めることを決めていますが、具体的な時期は今後検討するとしています。近年は僻地医療における医師不足が深刻化していて、自衛隊病院の医官が僻地の公立病院に派遣されたり、隊内で医師不足となる場合は、中小の駐屯地等では医官が常駐しておらず、付近の民間病院の医師が駐屯地委託医師となる場合もあります。

防衛省職員の優遇

利用対象者を防衛省職員とその家族、つまり防衛省共済組合の被保険者に限定していますが、2006年以後は、中央、札幌、福岡等一部の病院では職員と家族以外の一般外来受診を開始しています。制度上やむを得ないのですが、自衛官は私傷病でも自己負担なしに診療を受けられます(給料の1.6%があらかじめ控除されています)。なお、防衛事務官の場合には、私傷病であっても俸給からの控除もなく(他省庁の事務官にはそのような私傷病の医療費無料の制度はないため)、財務省からの指導で平成22年4月1日から自己負担3割になりました。しかし医療費の計算方法は、一般国民・他省庁の公務員が1点10円で計算されるのに対し、自衛隊病院において防衛省職員等は1点7円で計算され、実態として、一般国民に比べて3割引であり、差額が公費によって賄われています。

自衛隊衛生科のお仕事

自衛隊衛生科の職員は、ざっくりいうと、「お医者さん、薬剤師さん、看護師さんなど陸上自衛隊の医療チーム」。自衛官である医師は「医官」、薬剤師は「薬剤官」、看護師は「看護官」と呼ばれています。衛生科部隊や駐屯地医務室、自衛隊病院 に配置され、傷病者・患者の治療、医療施設への後送、隊員の健康管理、防疫及び衛生資材等の補給整備等を行います。近年では海外での大規模災害における国際緊急援助活動でも活躍しています。自衛隊中央病院の院内感染がゼロなのは、衛生科の力量が高いとも言えますね。大変なお仕事だと思います。

自衛隊衛生科の実力~自衛隊の災害派遣要請~

この度、各自治体が行う軽症や無症状の新型コロナウイルス患者を、自宅や病院から宿泊施設への移送では、陸上自衛隊に災害派遣を要請するケースが多くありました。移送のノウハウも蓄積されてくれば、今後は、民間交通事業者に委託することも検討していますが、車内での感染対策や防護服の着用方法、移送時の注意点なども伝えてもらうために、隊員に感染防護策の指導をお願いしています。

これらも自衛隊衛生科の実力のお陰なのですね。自衛隊の方がいらして、心強いですね。

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