新型コロナウイルスを機に疫病と日本の歴史を考える。上編・古代と奈良時代

新型コロナウイルス感染症は、世界同時多発的に発生するとともに現代日本に久しぶりに起きた大規模な疫病でパンデミックと呼ばれるほどの災害になりました。しかし、日本の歴史上では、疫病は、実は珍しいことではないのです。

過去、日本で感染症の疫病として流行したものは、痘瘡(天然痘)、麻疹(はしか)、赤痢、コレラ、インフルエンザ、癩、結核、梅毒、コロナウイルス(SARS、MARS)などがあげられるます。

疫病と改元

昨年、改元された令和は、「大化」以降、248番目の元号改元です。折しも偶然ではありますが、実は、改元と疫病には、深い関係があります。改元理由で最も多いのは、自然災害や戦乱、疫病など大きな異変が起きた時の「災異改元」で、100回を超えるそうです。新天皇の即位による改元は、74回なので、それと比べると多いですね。もちろん令和の改元は、新天皇即位によるものですが、古代の神々から示される疫病についての警告のようにも思えてくるタイミングです。

なお、災異改元のうち、約3分の1の三十数余りは、死者が多く出るほどの疫病の大流行の時だったようです。一番多かったのが天然痘。続いて高熱と全身に発疹が広がる麻疹(はしか)。治療法や予防法のない古代では、元号を変え、都を移し、ウイルスから逃れて、都を立て直し、ひたすら祈る、そんな繰り返しだったのかもしれません。

古代の疫病

縄文時代は、疫病はあまり流行していなかったと考えられているようです。一番古い疫病は結核のようで、弥生人の人骨からカリエスが発見されているのだそうです。

しかし、古代は、痘瘡(天然痘)の流行が大変深刻で、政治や歴史にも大きな影響を与えていました。

実在したと考えられる初めての天皇崇神天皇の時代(神武天皇以来10代BC80年頃)には、疾疫が流行し人口の半数が失われてていたことが『日本書紀』に書かれており、これは、痘瘡(天然痘)だと考えられています。

飛鳥時代、敏達天皇(585年)の頃にも流行しており、これも痘瘡(天然痘)と考えられており、政権争いの元にもなっていてます。古来神をあがめず仏教などというものを取り入れるから、疫病が流行るという物部氏と、仏像を焼いたりしたから疫病が流行るのだとする蘇我氏の対立である丁未の乱(ていびのらん)です。

奈良時代

735年にも大流行がありました。天平の疫病大流行で、735年から737年にかけて流行し、当時の日本の総人口の25–35パーセントにあたる、100万–150万人が感染により死亡したとされています。これも痘瘡(天然痘)、735年に九州で発生したのち全国に広がり、首都である平城京でも大量の感染者が出ました。737年6月には、疫病の蔓延によって朝廷の政務が停止される事態となり、国政を担っていた藤原四兄弟も全員が感染によって病死したのです。感染源となったのは「野蛮人の船」(外国船)から疫病を移された1人の漁師とされる説と遣新羅使もしくは遣唐使が感染源である可能性が高いとする説があります。

天然痘の流行に個人的な責任を感じた当時の為政者である聖武天皇は、これを契機に仏教への帰依を深め、東大寺および盧舎那仏像(奈良の大仏)の建造を命じ、日本各地に国分寺の建立させたことは、教科書にも載っています。仏教にかける費用は、国の財政を破綻させかねないほど巨額であったと言われています。

この天平の疫病大流行は、歴史に残るパンデミックと呼べるほどの大流行で、以後、日本では数世紀にわたって痘瘡(天然痘)のエピデミック(流行)が繰り返されることになりました。しかし、10世紀を迎える頃には日本人にとって天然痘の流行はエピデミック(地域的な流行)小規模化しており、735–737年のような壊滅的な被害が出ることはなくなったと言われています。

パンデミック・エピデミック・エンデミックの違い

pandemic パンデミック(汎発流行)

(さらに流行の規模が大きくなり)国中や世界中で、感染症が流行すること。世界流行、世界的流行とも。

epidemic エピデミック(流行)

特定のコミュニティ内で、特定の一時期、感染症が広がること。特に突発的に規模が拡大し集団で発生することを「アウトブレイク(outbreak)」と呼ぶ。

endemic エンデミック(地域流行)

特定の人々や特定の地域において、「regularly (ある程度の割合、ポツポツと)」見られる状態。地域的に狭い範囲に限定され、患者数も比較的少なく、拡大のスピードも比較的遅い状態。「流行」以前の段階。風土病もエンデミックの一種にあたる。

まとめ

いかがでしたか?感染症は、一定の波で日本を襲っていたものの、当時の人には原因も対策も分からず、今以上に恐ろしいものだったようですね。

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