今更聞けない国と地方の基礎的財政収支(PB)とは何

国の2021年度予算に対する各省庁の概算要求は9月30日に締め切られましたが、一般会計の要求総額は過去最大の105兆円の見通しです。2021年度予算は2020年度予算と同規模を原則としているものの、新型コロナウイルス対策は別枠にしています。そのため、要求額レベルでは7年連続で100兆円超え。新型コロナによる景気の悪化により、税収は確実に減るところ、新型コロナ対策への歳出増圧力が各方面から強まっています。政府が新型コロナ以前から取り組んでいた財政健全化も更に目標達成は遅れていくことが必至なようです。

予算の審議で議論されるのが国と地方の基礎的財政収支(PB)ですが、国と地方の基礎的財政収支(PB)とは何でしょうか?

基礎的財政収支(PB)

これまでの借金(国債)の返済費以外の支出である政策的経費(基礎的財政収支対象経費ともいう。全てではないんですね。)を、税収と税外収入でどれだけまかなえるかを示す財政健全化の指標です。

つまり、国債の元利払いを除くその年度の支出を、新たな借金に頼らずに税収などで賄えているかどうかを示すものです。たとえ、この収支が均衡しても、利払い費の分だけ国債の残高は増えることになりますね。

借金によって財政運営を行っているのは、国だけではなく地方公共団体も同じです。国と地方の1年間の支出が借金をせずに運営することが現在はできていないのです。

黒字化目標

政府は、「新経済・財政再生計画」(2018年6月策定)に基づき、「経済再生なくして財政健全化なし」との基本方針の下、歳出改革等に取り組んでいます。

財政健全化目標として、2025年度に「国・地方を合わせたプライマリーバランス(PB)を黒字化」を閣議決定し、同時に「債務残高対GDP比の安定的な引下げ」を掲げています。

2019年度から取り組み2021年度を基盤強化期間と定めて、社会保障関係費の抑制や非社会保障関係費の施策の優先順位の洗い出しや予算の重点化など具体性が乏しいまでも歳出改革に取り組み、2025年度を計画最終年、2021年度に中間評価を実施することを2020年の経済財政運営と改革の基本方針2020(いわゆる骨太方針)にうたっていました。

基礎的財政収支は、リーマン・ショック移行、景気回復の影響で縮小傾向にあり、政府は元々、黒字化の目標は2020年度と定めていましたが、2018年度に2025年度に先送りしたのでした。

目標達成の見込み

2020年1月の試算では、2021年度以降に財政改革がまったく行われなかったとして、2020年代の名目経済成長率を3.5%前後と見込む成長実現ケースでも、基礎的財政収支の黒字化は2027年度になるとしていました。

つまり、成長率が高まって追加的に増税しなくても税収が自然に増えるシナリオでも、財政改革をしないと2025年度に財政健全化目標は達成できないことを意味していました。

しかし、7月31日、経済財政諮問会議で新型コロナの影響を反映して改訂版として示された「中長期の経済財政に関する試算」(中長期試算)では、名目経済成長率を3.5%前後と見込む「成長実現ケース」でも、黒字化は2年後ろ倒しとなって、2029年度となることが示されています。

黒字化が遠のく理由

基礎的財政収支対象経費が増えるから?

確かに、新型コロナの影響で、1人10万円の特別定額給付金や持続化給付金などを支給して歳出が未曽有の規模に膨らんています。歳出の増加は、確かに黒字化の障壁にはなりますが、新型コロナ関連の財政支出は臨時的な対策であって、感染症が収束すれば不要となります。それよりも深刻なのは税収の減なのです。

GDP落ち込みに伴い税収が減少

政府は、名目GDPが落ち込むことで税収も減ると見込んでいるます。2025年度の国の一般会計での税収等は、2020年1月の試算では79.1兆円だったの対し、7月試算では76.1兆円となっていいます。

つまり、2020年度の名目GDPが落ち込んだ後、経済は回復するものの、2025年度の名目GDPは2020年1月試算の約658兆円から、7月試算では約637兆円に落ち込むこととなっています。これにより、政策的経費も以前の見込みほどには増えないとしても、税収も増えないため、その差の基礎的財政収支が悪化する構図が浮かび上がってくるのです。

2021年度予算編成の課題

国債依存度が過去最高

2020年度の井一般会計歳出は、新型コロナ対策を盛り込んだ2回の補正予算で合計57兆6000億円を編成したこともあり、160兆3000億円まで積み上がっていました。2回の補正予算は国債で賄い、2020年度の新規国債発行額は当初予算と合わせて90兆2000億円。リーマン・ショック後の2009年どの国債発行額52億円を大きく上回り、歳入に占める国債の割合を示す国債依存度も当初予算時の31.7%から補正後は56.3%とリーマン・ショック時の52.1%を超え過去最高となっています。

国債発行残高は1990年代は166兆円だったものの、2020年度末には964兆円んある見込み。借入金や政府短期証券、財政投融資なども含むと国の借金は2020年6月末時点で1159兆289億円となり過去最高です。日本国債の格付けは引き下げられています。

地方との折半対象財源不足も復活

地方公共団体の財政を地方税以外の歳入として支える国からの地方交付税は、国の一般会計から交付税特別会計に繰り入れてから全国地方公共団体に交付されます。一般会計から繰り入れる減資は4つの国税で割合は法律で決められていますが、この国税4税の法定率分が1兆4040億円減となり、13兆9213億円。地方譲与税を含む地方税収は3兆6000億円減の39兆9000億円。地方公共団体財政が必要とする最低限の歳出に足りない分は臨時財政対策債の新規発行で賄うが、その額は2020年度の2倍強となる6兆8000億円と見積もっています。

臨時財政対策債は地方交付税総額の算定に際して、地方財政の不足分なので地方が賄うものでありますが、制度的な問題もあることから、財源不足を国が特例加算として、地方と臨時財政対策債の発行で半分ずつ負担し合う「折半ルール」の対象となる財源があります。この折半ルールは2019年度、2020年度は解消されていました。しかし、2021年度は国税、地方税とも減収となる見込みから3年ぶりに復活する見込みです。地方交付税の確保は、地方にとっても、地方分を確保する2021年度予算編成作業に当たる総務省としても厳しい物になりそうです。

まとめ

予算編成の時期に突入しておりますが、政権運営にとって予算編成は極めて重要な政策手段です。

このタイミングで、財政健全化目標として「国・地方を合わせたプライマリーバランス(PB)を黒字化」は将来へ大きな財政負担を強いらないためにも改めて認識すべき課題だと思います。

政策に恩恵を得る関係団体や与党議員は自らが望む政策に予算を振り向けるよう要求し、各省庁もそれらを忖度して要求することでしょうが、それをすべて認めると税収だけでは財源が賄えず、一層、国債を増発しなければならなくなります。

新型コロナウイルス感染症への対策は喫緊の課題ではありますが、すべての予算要求を認めても政権が高い評価を得られるものではなく、正当に政策を評価していないと批判されるべきでしょう。どの要求を認め、どれを認めないか、メリハリ付けができてこそ、政権の実力を内外に示すことができると思います。

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